親知らずの抜歯
永久歯の生え揃った後、前歯の真ん中から数えて8番目の歯が、いわゆる「親知らず」です。痛みや不便がないために、親知らずが生えているかどうかをご存じない患者さまも多く見られます。
正しい位置で、まっすぐ生えており、きちんとケアできていれば抜歯せずとも問題ないケースもありますが、結局は歯ブラシの届きにくい場所であるため、どうしても「むし歯になりやすい歯」となります。
患者さまが正しいケアをできているかどうかも抜歯の要/不要の判断材料となりますので一概にはいえませんが、ぜひ一度、ご自身の親知らずの現状と将来的なリスクを把握しておくためにも、当院で検査を受けられることをお勧めします。
安心・安全の抜歯のために
当院では、より安全な抜歯を行うために、最新の高性能CT「ベラビューエポックス Veraviewepocs 3D」を導入しました。大がかりな抜歯が必要と判断した場合には、速やかにより高度な設備の整った医療機関をご紹介いたします。
抜歯の必要な親知らずの生え方
では具体的に、どういった場合に抜歯が必要となるのでしょうか? 以下の項目に当てはまる方は、早期に歯科医院を受診され、歯科医の判断を仰ぐことをお勧めします。
1親知らずが顔を出している/埋まっている、にかかわらず、痛み・違和感がある。
→親知らずが周囲の歯・歯肉を圧迫している可能性があります。
2痛みはないが、親知らずが斜めに生えている。
→ブラッシングが難しいため、むし歯リスクが高い状態となります。また、周囲の歯肉を傷つけがちですので、歯周病リスクも高い状態です。
3ときどき親知らず周辺が痛む・違和感があるが、数日経つと治まる。
→痛み・違和感に慣れただけであり、親知らずが引っ込んだわけではありません。
4親知らずの手前にむし歯がある。
→手前の歯がむし歯になったということは、それよりケアの難しい親知らずも、すでにむし歯になっているか、むし歯リスクが高い状態だといえます。
5親知らず周辺の歯肉が腫れている。
→親知らずによる歯肉の圧迫が考えられます。
6上だけ(もしくは下だけ)親知らずが生えているため、咬むと向かい側の歯肉に親知らずが触れる、傷つけている。
→傷は炎症のもと、炎症は歯周病のもとです。抜歯により、歯肉への直接の刺激を防ぎます。
7矯正をする・する予定がある。
→矯正後に遅れて親知らずが生えてくると、せっかくのきれいな歯並びが圧迫により乱れる可能性があります。少しでも歯科矯正をお考えの方は、親知らずの抜歯の必要性を歯科医に判断してもらわねばなりません。
8妊娠の予定がある・可能性がある。
→妊娠は、ホルモンバランスの乱れを引き起こします。それまで感じなかった痛みが表出することがあります。いざ抜きたいと思っても、麻酔を伴う抜歯をためらう方が多くいらっしゃいます。胎児への影響はほとんどないといわれていますが、あらかじめ余計な心配を排除しておくためにも、妊娠前に親知らずの状態を歯科医に診てもらうことが大切です。
歯の保存
親知らずの抜歯や歯科矯正により抜いた歯を、「歯髄バンク」にて冷凍保存します。
10年、20年と保存することができますので(それ以上も可)、将来歯を失ってしまったときに「移植」して再利用することができます。
歯の移植
「歯の移植」という言葉を耳にされたことはあるでしょうか。
日進月歩の歯科医療技術により、条件付きではありますが、「自分の歯を自分に移植する」ということが可能です。またこれも条件付きですが、保険を適用することも可能です。
インプラントとは違い、自分の歯を埋め込むわけですから、拒絶反応のリスクは大幅に軽減されます。
患者さまのお気持ちとしても、欠損した歯を自分の歯で補い、噛めるということで、非常に喜んでいただけます。
移植の条件
1移植可能な親知らずがある。
これは最低条件です。形、大きさを含めて、移植先に適応するかどうかを判断します。
2(保険適用の場合)抜歯と移植を同日中に行える。
抜歯と移植を同日中に行えば、保険が適用できます。ただし、抜歯後の傷の治癒期間が必要な場合には、日を置いて移植ということになりますので、保険は適用されません。
3移植先が6番目、7番目。
親知らずを前歯として使う、というようなことはできません。親知らずは一般的に、6番目、7番目への移植が限界とされています。